C20 下腿部の施術がトラウマになりそうです

質問

50代女性 施術回数4回 主婦

主訴:足の裏(土踏まず)の痛み、首こり

施術:足もみ(本人の希望)+整体45分(上半身Ⅰと下半身土踏まずの処方)

 

主訴の経過: 引っ越し(平屋から2階建てへ)を機に朝だけ足裏・土踏まずに鈍痛がするそうです。歩いていると良くなるそうです。病院へは行っていません。今は良いそうですが以前、ぎっくり腰、座骨神経痛、膝痛を患っていました。

 

施術経緯

長趾屈筋、腓腹筋1TPにアプローチしています。ヒラメ2TP、足底方形筋も念のため施術しています。

経過:首のこりは楽になりました。ヒラメ筋2TPは少し痛いですが、それ以外痛くなく、柔らかいです。しかし、土踏まずの痛みは全く変わらないとのこと。

以前も足首の痛みの方が良くならなかったことがあり、本当に下腿部の施術にトラウマを抱えそうです。

 

やはり、腕が悪いのでしょうか・・・もう一度ビデオを見直し練習し直す予定です。しかし、朝だけ痛むとはどんな状態を指しているのでしょうか?引っ越して階段があるようになったことは影響しているでしょうか?

 

ご指導よろしくお願いいたします。

 

回答

可愛い弟子が施術にトラウマを抱える事態だけはなんとしても回避したいところですね(笑)

 

足裏(土踏まず)の痛みという症例は、実に教科書的な訴えなので、自信満々で臨むところでしょう(少なくとも私ならそうです)

ところが、さっぱり改善感がない!

『う~ん、なんでだ?おかしいなぁ、どうして?OMG!』

 

足裏の痛みに限らず、こうしたことは実はよくあるんです。

私も結構経験しておりますしね。

どう考えても、原因不明のときもあるのですが、しかし、一番多いのは、ポイントが的確ではなかったということだと思いますよ。2番目はTPの二次災害による組織拘束(エネ・ブロック)かな。

 

原因不明の場合はお答え不能ですが、答えられる範囲であると仮定して、上記2つの側面から考えてみましょう。

 

(1)ポイント

TP的チョイスは間違っていません。

ファーストチョイスは腓腹筋第1TPです。

さて、腓腹筋第1TPが反応なしということはまず考えられません。

TP活性者でなくとも(症状のない人)、かなり痛がる部位ですよね。

ですから、この筋の第1TPのポイントが少しズレている可能性があります。まず、範囲を広げてトライしてみてください。

 

続いて、ヒラメ筋の第2TP。

これはセカンドチョイスとして真っ当な選択です。

しかし、このTPは脛骨際のときが多いのですが、より承山に近い部位(筋腹系)に出来ることもあります。そういう意味でここももう一度、範囲を広げてやってみてください。

 

足裏の筋群の施術は多分問題ないでしょう。得意分野でしょうから。

(母趾内転筋もアプローチがかかっているでしょうし)

長趾屈筋はサードチョイスですが、これもちゃんと視野にいれているところはさすがです。

深部筋なので、施術しづらいところではありますが、範囲が広いということはあまりないので、まあ、これはアプローチされていると思います。

 

(2)二次災害

(1)なければ二次災害系が考えられますよね。

逆に伸筋群にアプローチしてみてください。(前脛骨筋のライン)

膝裏(足底筋)も二次災害の原因となることがありますので、ここもよく緩めてみてください。

これら下腿部筋の二次災害系で考え、施術しても改善なしということであれば、既往歴から考えて、かなり個別的な組織拘束ではないかな、と思います。

そこまで個別的になると、一般論としてお答えが難しくなってしまいます。

そういう場合は経験がモノを言うという世界になりますね、施術しながら『あっ!』と気づくとか・・・

 

その他

朝だけ痛むというのはよくあることです。

寝ているというだけで同じ姿勢を続けていることになるわけですから、痛むを出す箇所に負担をかけているということなんです。腰痛なんかでもよくありますよ。

「平屋から二階がある生活へ」は大きな変化ですよね。ふくらはぎに負担をかけることは間違いないところでしょう。

 

以上、まずは(1)(2)に留意してトライしてみてください。

経過をお知らせください。経過によってはまた考えましょう。

 

その後の質問者からのメール

今日、患者さんがいらっしゃいまして、足の裏の痛みが消えたとのこと。良かったです。ありがとうございました。

 

コメント

なんだ、時間がかかっていたというだけですか。

なんとも拍子抜けするようなオチですが、質問自体はとても示唆深いので、このままアップしておきます(皆の参考にもなると思います)

でもまあ、良かった。結果的には4回の施術で治癒ということですから、特にウデが悪いということでもないですね。トラウマにもならないと思いますので安心しました。

 

C19 アキレス腱断裂の既往歴がある方

質問
アキレス腱を切ってから手術後、癒着して不調な方です。
ぎっくり腰で来られて、3日連続で施術を行い、大体良くなりました。ケガをした側の腓骨筋と腓腹筋が異常に硬く、聞けば、アキレス腱のみならず捻挫もしてたとのこと。
突っ張る感じがするのと、足の太さも違い、ケガした足の方が細いのです。
同じ側の臀部もとても痛がります。何処から何処迄が施術ポイントになりますか?
アキレス腱を切ってから4年経過しています。

 

回答
なるほど。
4年前、アキレス腱断裂から手術に至るも、癒着で調子がよろしくない、と。さらに前後関係は分かりませんが、同側捻挫の既往歴もあるということですね。


アキレス腱はご存知のとおり、腓腹筋とヒラメ筋が腱に移行して踵骨という骨にしっかり付着している人体最大の腱です。


その腱を切ってしまって手術をすると、当然、短くなって、ヒラメ筋や腓腹筋をひっぱり負担をかけますから、つっぱり感は当然でしょう。


その度合が強ければ、患側の足全体に影響が及び、結果、殿部筋群に不都合が出てもおかしくありません。そのクライアントさんは、変な言い方ですが、実に教科書的な症状かと思われます。


アキレス腱付近にはあまり血管が走行していないので、断裂したり、或いは手術したりすると、再生、復元力が働きづらいという特徴があります。(栄養等が届きづらいので)


その回復過程において、手技によってキチンとした処置をしたなら、結果はかなり違ってたはずです。もっと手技が注目されてしかるべきで、手技法家としては実に残念でなりません。
ま、今回の場合はすでにそうなっているのですから、恨み事を言っても仕方ありませんけれども。


さて、これらの部位の施術は、パーカッション・ハンマーがあるとやりやすいのですが、今回は手技のみということで説明したいと思います。


まずアキレス腱そのものをよく解してください(癒着の度合いなどを勘案して慎重に。大丈夫のようでしたら、ごく普通にやってよろしいです)


フルフォード博士が呼ぶところの「組織拘束」そのものと言えますから、これらの処置は必須です。技法は基本手技を援用しながら、自分的にやりやすい方法で構いません。


続いて、腓腹筋、ヒラメ筋へのアプローチ。
さらに後脛骨筋の処理が必要になってきます。


この筋はアキレス腱に痛みを送ることで知られている筋ですが、今現在、痛みがなくとも、アキレス腱付近の血流を阻害させてしまいます。ただでさえ、血流が不足しているわけですから、しっかりやるに越したことはありません。


そして、捻挫の既往歴があるわけですから、当然、腓骨筋群(特に長腓骨筋に反応がないか確かめながら)の処理も必要ですね。

 

アキレス腱損傷にしても、捻挫による腓骨筋群のTP形成にしても、これらの症候を一括して「足首拘束」ということができます。


足首から上へ影響を及ぼし、股関節にまで障害が広がっていくわけです(三関節原理)。故に股関節筋である殿部筋群に痛みが出るのは当然です。だから、教科書的と言ったのですが、それら殿部筋や腰方形筋などにも負担がかかって、ギックリ腰的な症状が出たのでしょう。

このクライアントさんの場合はアキレス腱と腓骨筋が元凶であろうと思います。


手術までして、さらに4年経過しているわけですから、元に戻すことはできませんが、手技によるメンテナンスを怠りなく行えば、かなり将来の身体的不都合を防ぐことができると思います。


メンテ周期は個別的ですから分かりませんが、月に一回くらいでもかなり違うでしょう。


PS
殿部筋&腰方形筋の処理は当然行います。

 

C18 子宮筋腫持ちの方に腸腰筋アプローチは可能か?

質問
最近、子宮筋腫が肥大してきているという腰痛のクライアント様についての質問です。(それ以外にも子供のころに遊具に挟まれて内臓破裂の既往歴あり)
 1回目の施術ではうつ伏せと横向きで対応。しかし、骨盤が前傾し腰椎の前弯が増強されているので腸腰筋のアプローチも必要かなと施術後考えた次第です。
 
再来時、前回の施術はどうだったか聞いたところ、「ずいぶん楽になった」と言っていただきました。しかし、まだまだ腰の痛みは残っているようです。2回目は腸腰筋のアプローチを考えていたので、施術前に腹部をあつかうことがあるということを告げてはおきましたが、仰向けで首周りの施術をする際に腹部を見たところ皮下脂肪がついて腹部が出ている感じではなく、腫物がある異様な膨らみだったため腸腰筋のアプローチは避け、施術後に腸腰筋のセルフストレッチをお伝えして終了しました。
長くなりましたが、質問は「子宮筋腫を患っているクライアントさんへの腹部のアプローチは可能でしょうか?
 
回答
結論的に言いますと、可能です。
私も按腹の臨床で、非常に大きな筋腫に触れたことなど数知れずですよ。ご質問の例にありますような見ただけで膨らみが分かるような方にも施術したことがあります。


クライアントさんが腹部アプローチを了解していれば、何の問題もありません。
なぜなら子宮筋腫は肥大化していると言っても炎症反応ではありませんので、触れて症状を憎悪させたり痛くなったりすることがないからです。
 
因みに前弯増強で子宮筋腫が肥大化していて・・・かつ腰痛ということであれば、確かに腸腰筋が原因の可能性大ですね。
(内臓破裂の既往歴も腸腰筋TPの形成に影響しているでしょう)


腸腰筋アプローチはさほど筋腫に触れることはないと思いますが、遠慮なくやってください。しかもすでに了解をもらっているとのことですから。
腸腰筋のTP活性には直に圧をかけるのが沈静化の一番の近道です。

 


 

C17 ドケルバン病に施術は有効か?

質問
ドケルバン病という腱鞘炎(橈骨側の手首の痛み)に対する施術は有効ですか?

 

回答
ドケルバン病とは、母指側に出る、狭窄性の腱鞘炎のことですが、このような炎症性の病態は適応外となります。


ところが実際、施術しますと、緩和することが多いのです。

 

何故か?


痛みそのものは、100%炎症からくるものではなく、やはりTPから送られてくるものも混じっているせいなんでしょう。


もう一つは、経絡反応でしょうね。遠位からの経絡反応によって炎症が幾分治まっていくという機序が考えられます。

 

というわけで、通常の母指側に痛みや違和感を送るTPをまず施術することは当然として、前腕全体を緩めるようにしてください。

そうそう、上腕三頭筋も橈骨神経を圧迫する可能性があるのでお忘れなく。

 

あと炎症があると予想される部位(痛むところ)は、刺激しないほうがよろしいかと思いますよ。補の手による手当てくらいにしておくのが良いでしょう。

 

これらの処置によってたちどころに治癒するということはないにせよ、症状が緩和される可能性は充分にあります。

 

C16 肩甲下筋は首痛の原因となるか?

質問
先日、姑の五十肩の治療中に首が痛い、横に倒したり、回したりが難しいと言われたり、五十肩ではないですが自分でも朝起きたとき首が痛くて、姑と同様の症状がありました。
 
そこで、主人に棘下筋と肩甲下筋を押さえてもらい、そこにジャンプサインがあり、ゆるむまで押してもらいましたところ、翌朝、首の痛みがほとんど無くなっていました。棘下筋をだけ弛めていた時は、朝に痛みがあり、昼間は楽になるが夕方からまた痛みが出るという状態でした。しかし、肩甲下筋を追加して弛めてもらったところ、翌朝症状が軽減しました。
 
首の痛みは肩の痛みが原因であると考え、ローテーターカフ群が首の筋肉にも痛みを送っている可能性があると考えてもいいでしょうか?

 

回答

ステップ3を修了した上級者らしい興味深い体験と考察だな、と思います。こういう質問は様々な思考回路を使って考えるので、私自身の頭の体操になりますね。
面白い質問有難うございました。

 

さて、ローテーター・カフ群(この場合、肩甲下筋)が首に痛みを送るかどうか?
この質問に対する答えは、単純です。

肩甲下筋のTPは首へ痛みを送りません!

 

これだけで終わってしまいましたら、面白くもなんともないですよね。ところが、物事(身体)はそう単純なものではありません。

 

この質問を読んだときに真っ先の思い出したのアンドルー・ワイルとフルフォード博士のやり取りです。

 

ワイル博士はフルフォード博士の手技を受けるときに、身体の状態を聞かれます。それに対して、特にどうってことはないが時々、首が痛むことがあると答えました。するとフルフォード博士は「肩に拘束があるのだろう」という所見を述べて手技に入っていきます。
~癒やす心 治す力~より

 

このシーンこそが私の施術家としての方向性を決定づけた名場面(?)なのです。(1995年頃)

 

(えっ?首の痛みって首が原因じゃない?肩の拘束が首の痛みを呼ぶ?やっぱそうか!)

自分自身が臨床で経験したことと繋がった瞬間でしたから、その文章に目が釘付けでした。


例えば、寝違いが長引き、長期に渡り痛みに苦しんでいる人に対して首そのものの操作よりも肩甲骨内縁へのアプローチで寛解した例が2~3ありましたし。そのような経験があって、後にTP体系を知ったとき、さもありなん!と納得できたわけです。


TP体系では首の痛みが首の筋肉に原因があることは例外的で、そのほとんどが肩部の筋にあるとしていますね。ご承知のとおりです。

 

さて、TP体系は再現性、及び共通性のある最低限の法則を見出し、それをまとめたものなのですが、個別性までは言及していません。

個別性にまで言及してしまうと、それはもはや“体系”ではなくなるわけですから当然です。


しかし、最低限のルールであるこということは、その枠に収まらないまさに個別的な例もあるということです。これもまた当然のことですよね。

 

そういう場合、どう考えるか?

TP体系のように具体的なピンポイント原因を使えない場合です。
さてどうする?

 

損傷伝導系としての経絡概念で治療を行っても良いのですが、こと「首」に関する限りは、むしろフルフォード博士の「肩拘束」の概念を使うほうが簡便で、利用しやすく、より早く正解に近づくと思いますね。

もちろん、「肩拘束」には肩関節やおっしゃるようなローテーター・カフ群も含まれます。

 

つまり、あなたが体験したように肩甲下筋のTPが間接的に首の痛みの治癒を邪魔しているケースこそ、「肩拘束」の一例なのです。
だからこそ、興味深いと述べたわけです。

 

したがって、TP体系の厳密解として考えるならば、肩甲下筋は首の痛みに関与しません。しかし、肩拘束が首の痛みを呼ぶことがあるというフルフォード理論では、大いに考えられるという結論に至るわけです。ここに手技に奥深さと面白さがあると思いませんか。

 

我々はクライアントの愁訴を取り除くのに全力を注ぐわけですが、イマイチ改善が遅い場合もあります。(おかしい・・・・もう少し早く改善しても良いはずなんだが・・・)と呻吟する場面も多々ありますね。

 

当然、頭の中にある様々な理論、ヒントを探し、一刻も早く正解に近づきたいと念願するわけですが、今提示された設問はそのヒントとして、これから大いに施術者達の益するところとなるでしょう。

 

なぜなら、経絡概念でもさすがに肩甲下筋までアプローチすることはありませんし、TP体系では述べたようにそもそもが首痛の対象外だからです。


おそらく、首痛でここに思い至る施術者はフルフォード博士の系譜を引いた者以外、皆無と思われます。

 

後世に残るまことに有意義な質問です。

 

 

質問
大腿筋膜張筋から太腿後ろに痛みがあるということで、大腿二頭筋を押したところ、足裏の土踏まずに響くと言われたのですが、この響いた方向は何が原因による症状でしょうか?

 

回答
ほう、大腿二頭筋押圧で土踏まずに響いたということですね。なるほど。こういうTP理論で説明できないパターンの響きを不定型パターンの響きと言いまして、わりとあるんです。


ところで、なぜ不定型な響きのパターンがあるかというと、人の身体っていうのは全部つながっていて、しかも、それぞれ固有の体質、歪みがあるからに他なりません。


全部の人が一人一人違うのは当然ですよね。ということは、全部の人にそれぞれ違った方法で治療しなければいけないことになります。ところがそんなことは事実上、できるものではありません。そこで、東洋では"証"という共通パターンを見出し、TP体系では万人に共通する再現性のあるポイントを確定していったわけです。


逆に言いますと、治療を簡素化して、効率をよくするためのある種の方便とも言えます。ですから、どのようなパターンにも当てはまらない響きがあっても不思議ではありません。それはそれで固有パターンを持っているんだな、と、そう認識すれば良いだけの話です。


足裏を深く持続圧していたら、肩に響いてくる!と言った人もいましたしね。それはその人の固有のパターンなんです。


ですから、私はその不定型パターンを「経絡は損傷伝導系であって、どこに響いても不思議ではないし、どこに響かなくても不思議ではない」と説明することが多いのです。


※損傷伝導系=身体のどこを押しても、最終的には損傷部位に刺激が伝わっていくという性質。経絡にはそういう性質がある、ということを経絡の損傷伝導系原理という。

 

C15 大腿二頭筋押圧で土踏まずに響いた。これは?

C14 斜角筋の響く方向についての意味

質問
斜角筋を押して響く方向が肩であれば、卵巣反応による肩コリであるということから、腕や指の方に響く場合は、何が原因による症状でしょうか?
腕や指の方にTPができているということではないのでしょうか?

 

回答
肩ではなく肩甲骨ですよ、卵巣反応の場合は。
肩甲骨は小腸経(瘀血)支配が強い部位です。そして斜角筋の一部に小腸経が走行しておりまして、その反応が肩甲骨への響きとして感じられる場合があるということです。ですから、斜角筋の響きを経絡と結びつけるのは、間違いではありません。ただし、斜角筋の響きには神経的な響きの要素(腕神経叢)もかなり多く、さほど厳密に考える必要はないのです。


ですから、ざっくりとした説明になりますのでご了承ください。


我々が斜角筋と呼ぶところの部位は、先の小腸経、そして脾経、胃経、大腸経、腎経が走行しております(増永経絡)。
ということで、脇の下に響く場合は腎経反応の可能性が高く、上腕後面は大腸経、母指、示指側への響きは脾経 or大腸経、小指側は小腸経反応の可能性があります。


経絡的な説明はそういうことなんですが、腕神経叢そのものの反応は、予測と説明は不能です。まだその機序がよく分かってないところがありますので。


おしゃるとおり、前腕、手指の筋にTPが形成されていて、そこに向かって響いている場合もあるかもしれません。そういうこととは全く関係なく響いている場合もあるかもしれません。
それは推測でしかありませんから、ここで断言することはできないわけです。


しかし、確実に言えるのはその響きが斜角筋が原因であるところの症状を軽快させ、時には消失させることさえあるということです。
ざっくりと、効いているかどうかのサインとして捉えれば良いのではないかと思いますよ。

 

 

C13 全身施術の意義

質問
筋肉の70%が下半身にあるということから、下半身にTPが形成されやすいと考えていいのでしょうか?

その場合、上半身の症状でもTPが形成されやすい下半身の筋肉も必ず治療した方がいいのでしょうか?そうであれば、TPが形成されやすい下半身の筋肉はハムストリングス筋群やヒラメ筋でしょうか?

 

回答
そうですね、TPの数からいうと確かに下半身が多いでしょうね。しかし、上半身の症状であっても下半身の施術を行うという考え方は、TP体系の中にはありません。TP療法の大きな目的は"今そこにある痛み"を最短で取って上げると・・・そのもっとも効率の良い方法は?というニーズから生まれてきたものです。痛みが取れればわざわざ全身整体する必要などない、というのが基本的な考え方です。


全身整体という考え方はTP療法ではなく、経絡概念から出てくるものです。経絡の特長の一つである"損傷伝導系"という性質を利用し、全身の調和を図ってこそ、より完治に近づくという考え方ですね。


難しい理屈はさておき「全身の調和を図る」には、直接的な原因のみならず、間接的な、あるいは愁訴の根本原因たる内臓の歪みにまでアプローチしてはじめて為し得るものであることは間違いありません。


TP体系を頭に入れなければ、即効的に愁訴を取り去ることが難しいので、TPの勉強を優先させておりますが、その施術法は一貫して経絡反応を起こさせる技法にこだわっているというのが我が流儀の特長です。したがって、経絡を知らずとも症状改善施術公式を取り入れながら基本手技に則って全身整体を行えば、TPの沈静化が図られるのと同時に期せずして全身的調和と内臓の歪みへのアプローチが為されます。


故に、ハムストやヒラメは確かに筋量からいっても重要は重要なんですが、全身的施術の意義としてあえてそこにこだわる必要はありません。

 

C12 老化と共にTPは形成されなくなるか?

質問
トリガーポイントは筋肉に負荷がかかり、その筋肉が短縮して形成されるということから考えると、老化で筋力が落ちると弾力が減少して短縮しにくくなり、TPができにくくなると考えるのは間違いでしょうか?

 

回答
いわゆる、骨格筋(横紋筋)には大雑把に2種類の筋肉があります。
一つは速筋(白筋)、一つは遅筋(赤筋)です。
速筋は短縮しやすい傾向があり、遅筋は萎縮しやすい傾向があるということが分かっています。


萎縮と短縮を正確に使い分けて表現することは難しいので、一括して短縮という言葉を使うことが多いのですが、実は萎縮によってもTPは形成されます。


遅筋の割合は女性が高く、それ故、筋力がないわりに持久力があったりもするのですが、実は加齢とともに男性も速筋の割合は少なくなっていきます。
つまり、パワーはなくなっていくのですが、持久力そのものは、極端な運動不足にでも陥らない限り、ちゃんと備わりつづけ、寿命直前まで自分の足で歩くことができるように設計されているのです。
(事実、私の祖母は80歳を超えているのに、当時の私(30代)よりも健脚で、心底驚いた記憶があります)


余談ですが、膝や股関節を傷め、寿命がくる前に歩けなくなるのは如何に勿体無いかが分かるでしょう。

 

何が言いたいかというと、加齢によって速筋は退化していきますから、確かにその部分での短縮割合は少ないといえるでしょう。しかし、遅筋は退化しづらく、そのまま機能し続けるわけですから、負荷をかけるというよりも、かけなさ過ぎで、萎縮を招き、それがもとで、TP形成に至るということは十分に考えられるわけです。


「若者は過度の運動によってTPが形成され、年配者は運動不足によってTPが形成される」(要旨)とTP啓蒙家のクレア・デービス氏が述べているのはそういう理由からなのです。

C11 五十肩その後のケア

質問
 
お忙しいところ、先日は五十肩の治療に関して相談にのっていただきありがとございました。
 
以下の通り、結果を報告させていただきます。
 
合計4回:11月に2回/週1と12月で2回/週2の治療。
12/4が最後の治療でした。
しばらくして、寝返りで目が覚めなくなり、ブラシで髪の毛をとかしたり、湯呑みを持つときも、左手で右手を支える必要がなくなりました。


治ったと言われてとてもうれしいのですが、
自分の技術が未熟なので、不安があります。
また、治療経験がないので、
もしかしてを考えた方がいいのかと思いました。
 
お忙しいところ、
このような質問は失礼かと考えたのですが、
教えていただけますでしょうか。

1.どのくらいの確率で五十肩の再発があり得るのでしょうか?

2.どのような動作をすると再発する可能性が大きくなるのでしょうか?

 

回答

かなり重症な五十肩だったようでしたが、わずか4回の施術で目覚ましい成果が出ているようです。基本的に心配することはないと思うのですが、生来の心配症なんでしょう、ご質問にお答えしておきますね。

 

1、どのくらいの確率で五十肩の再発があり得るのでしょうか?

 

確かに、短期間で良くなった人の再発率は高いようです。私自身も経験していますし、他の卒業生からの報告にもありました。
何%の確率か、とあらためて問われても、数値を具体的あげることはできませんが、施術後1週間ほど経っても大丈夫なようであれば、再発率はそれほど高くはなく、完全に元に戻る確率は(印象として)1割~2割り程度かな、と思います。

 

元に戻れば、また施術すれば良いので、再発ついてはさほど深刻に考える必要はありません。施術者がコントロールできること以外で気に病む必要はないんです。そんなことを心配していると、心身ともに参ってしまいますから。

 

2、どのような動作をすると再発する可能性が大きくなるのでしょうか?

 

一番多いのは痛みがなくなったということで、ここぞとばかりに張り切って仕事をする(遊びやスポーツでも同じ)ケースですね。
ですから「どういう動作が・・・」という質問に対して具体的な身体動作を挙げることはできません。
転んで手をついて再発したという人もいましたが、これは不可抗力ですから、どうしようもないですし。

「無理すると再発することもあるからくれぐれも無理しないでくださいね」というアドバイスはするにしても、「痛み」というのはなくなると意識から完全に消失しますから、痛いのを思い出しながら気をつける、などという芸当は中々できるものではありません。
無理する人は無理してしまうんですよ。

ただ、冷やさないようにすることは重々注意喚起しておいてください。
冷えると血行が悪くなってTP再活性化が起きやすくなります。
ゆっくりと湯船に浸かって一日の疲れを取ると共に、患部該当箇所の血行促進を図れば、再発率はグーンと低くなるはずです。